二万余日記 © kawase hisaki 2025 All rights reserved.
墓標               九月の終りは 私には 証を遺す季節としてはたらく 秋分 という言葉に この頃の風の肌触りの遥けさを見出してきた 人々 の静止画を 地球にかつて発生した全ての細胞よりも多く そこかしこに秘めつつ 存置されている人新世に 湯を沸かす かつて 生きるのをひとまずやめようとしたとき 九月を終える七日間で作った 小さな音楽た ちを思い出す それらは わが墓標ですらない なぜなら その頃は ―――そして 今もなおそうであるが 生きてなどいなかったからだ 祖父と呼ぶ人のうちのひとりは 私がこの世に生まれる幾億秒も前から なめらかに混ぜられた日の光がとろけるボウ ルのように窪んだ山の中腹で 会ったことのない隣り合う人たちとともに 万年木の墓標として 居続ける 私を待ってはいないが 私の九月の終りを いつまでもしずかに 少しだけ 澄みわたらせる top (contact : info アットマーク nimanyojitsuki.blue)